ゆりかごの木

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 これは大樹が、何者なのかを取り戻す物語。
 ある日、くたびれた男女が大樹の前に現れた。腕にはひとりずつ赤子が抱えられていた。
 二人は意を決したように、赤子を大樹の根元へと置き去った。
 大樹は知っていた。数百年間、人が訪れていないことを。
 だが、赤子を放っておくこともできなかった。
 ビシビシと音を立てながら枝を伸ばした。
 器用に伸ばしたその枝でゆりかごを編み、赤子を拾いあげた。
 近くに村がある。しかし、根を張ったこの場から動くことはできない。
 大樹は、遠き日々を思い出した。まだ人々が木の下に集まっていた時のことを。
 枝が赤みを帯びていく。花芽が芽吹き、同時に咲いた。
 大樹は、自分が桜の木であることを思い出した。
 一夜にして満開の花が咲いた桜のもとに、たくさんの人々が訪れた。
 そして赤子たちは村で引き取られ、いつしか大樹は『ゆりかごの木』と呼ばれるようになった。
ファンタジー
公開:26/01/14 21:06

猫目ちゅん

のんびり屋さんです。よろしくお願いします。日常を書くのが好きです。ファンタジーも好きです。思いついたものならなんでも好きかもしれません。たまにタイトル裏のイラストも描きます。

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