存在しない記憶――志賀直哉に捧ぐ――【3】

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「勇者さまだ!」
 群衆は祭りのように踊り狂っている。遠めに大名行列を思わせる煌びやかな籠や旗、軽率らがナメクジが這うようにゆっくりとうねりを伴って近づいて来る。自分以外に勇者を名乗る不逞の輩の存在に彼はムカムカしてきた。彼はスマートフォンが異世界でも使えることを確認すると兄の信行に架電した。
「やあ、信さん、久しいね。ちょいとアレを頼みたいのだが、いいかい?」
「お前のことだから無茶はしないと思うが、父上が何を言い出すか心配だ」
「大丈夫だよ。とにかく頼んだよ」
 メッセージアプリで大名行列の座標を信行に送信した。
 まもなく天が光り、曇天の空が綺麗な快晴になった。(了)
ファンタジー
公開:26/01/09 09:43
更新:26/01/10 00:33

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