寒い冬

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雪の降りしきる村で、時計台だけが夜明けを拒み続けていた。針は零時を指したまま凍りつき、鐘は鳴らない。
私は白い息を抱えて広場に立ち、止まった影を数えた。時計台の三本の針の影のはずが四本あった。
四本目は風を纏って微笑んだ。
忘れ物を返しに来たと声がした。私のポケットには見覚えのない鍵が、鋭く冷たく光っていた。
鍵穴など無いはずの冬の空に、細い裂け目が生まれる。光と雪が逆さに流れ、村は静かに回り出す。
零時の鐘が一度だけ鳴り、影はほどけた。朝はまだ来ない。だが私の足跡だけが前へ伸び、目の向こうには凍った湖に浮かぶ家々が逆さに見えていた。
私は一歩を踏み出し、雪の静けさに耳を澄ませた。
世界が息を吸う音がした。振り返ると足跡は消え、代わりに一本の白い道が空へ伸びていた。
静かな鐘の余韻が雪を積もらせ、夜は更に深く星は凍るだけ。ただ、ただ。
ファンタジー
公開:26/01/08 22:41

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