濁った目

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 夏祭りの屋台でとった詩人が、大きくなりすぎてしまった。飼い始めた頃はかわいくて、チューリップやキリンについての詩を、キラキラした目で書いていたのに、今では死や神についての詩ばかりで、目も濁っている。原稿用紙と鉛筆代も馬鹿にならない。家族で相談して、ある夜、詩人を遠くの川の橋の下に捨てた。詩人は濁った目で私たちを見つめ、苦笑いを浮かべていた。数日後、偶然その橋を通りかかると、一枚の原稿用紙が河原に落ちていた。近づいて拾い上げると、そこには愛についての詩が書かれていた。美しい詩だった。詩人を捨てた場所を見たが、詩人はどこにもいなかった。
ファンタジー
公開:25/12/31 11:59

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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