狂い咲くサクラ

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週末に映画を観た帰り、植物園に寄った。
このごろ働き詰めだった私の心は、ささやかな外乱を欲していた。
紅葉も過ぎ去り、年の瀬が近い今の時期。
人はほぼ居なかった。落葉は掃いて集められ、木々は細い枝を露わにしていた。
ただただ、寂しいなと思った。

園内を一周した頃には閉園のアナウンスが聞こえてきた。
出入り口の門から少し離れた所、桜が咲いていた。
「――狂い咲きってやつなのかな」
「狂っているとは、ふぉっふぉっふぉっ」
背後の声に驚き、振り返る。
サンタのように笑う、お爺さんが一人。クリスマスはもう過ぎた筈だが。
「誰が決めたんじゃ?此奴にとってはこれが普通なんじゃよ」
彼が指差す先、樹名を記したプレートを見る。
ジュウガツザクラ。
つまり、そういう品種なのだろうか。

「そろそろ閉めますよー!」
若い男性が門の方から呼びかける。
辺りをどれだけ見回りしても、さっきのお爺さんは居なかった。
その他
公開:25/12/27 20:31

いぬさか( 関東 )

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。
同名で NOVEL DAYS でも活動しています。

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