ダンスホール

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艶やかな夜色のソースが広がる皿の真ん中には金色と銀色の小さなミラーボールが一つずつ、寄り添う様に並んでいた。

「デザートの【ダンスホール】でございます。まずはビターチョコレートソースのフロアを跳ねる光を目でお楽しみ頂き、ミラーボールを割ってお召し上がりください」
「ありがとう」

スタッフに礼を告げ、仲睦まじく回転する二つのミラーボールから放たれた輝きに妻と微笑み合う。あぁ、私達の出会ったあのダンスホールの煌めきにそっくりだ。
私は金色の、妻は銀色のミラーボールからナイフを入れた。シャリンと割れた金色からはトロリとルビー色のジャズが流れ出し、銀色からはタタン!と真珠色のステップが溢れ出す。私達はそれを、そうするのが当たり前といった様に同じタイミングで口へ運んだ。

口いっぱいに広がる懐かしい眩しさの中に、純白のドレスで軽快にステップを踏む妻とその姿に見惚れるトランペット奏者の僕が見えた。
公開:25/12/27 07:31
『もしも料理店』読んで 私もミラーボールで お料理作ってみた! よいお年を~

ネモフィラの旅人( 風の向くまま )

旅人なのでいたりいなかったりします

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