よそゆき

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冷蔵庫には私たちが同棲を始めた頃から入っている開かずのジャムがある。
流石にもういらんだろうと、手に取って夫に聞いた。
「このジャム、もう使わないよね。ていうか、使ってるの見たことない」
「要らないね。よそゆきのジャムだから」
「なにそれ」
「ご飯派のボクが君と暮らすことになって、初めて買ってみたジャムさ」
夫は辺りを見渡し、指をさしながら言った。
「よそゆきのインテリア。よそゆきの食生活。よそゆきのボク」
夫は自身の頭を指さしてカツラを外した。
「全部君に外面をよく見せたくて始めたんだ。見栄っぱりだから、ボク」
夫の指先が巡り巡って、私に向いた。
「......でもこうしてゆきと結ばれたんだし、安いもんだね」

カツラを片手に冗談っぽく笑う夫が怖かった。
私も既に、彼の“よそゆき”の一部なのだろうか。
ホラー
公開:25/12/26 18:00
更新:25/12/26 18:30

黙る子

最近ショートショートを始めた修行中のド素人です。
基本的にnoteにて投稿しております。
一部フォーマットのあったものをこちらでも投稿させて頂きたいです。

note→https://note.com/great_heron1630

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