レンタルの蚊

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 夏の夜道を、一人の青年が、ガラス瓶を持って歩いている。ガラス瓶の中には、数匹の蚊が入っている。レンタルの蚊だ。青年は先ほどまで、閉め切った自分の部屋にレンタルの蚊を放ち、素っ裸で、血を吸われるままにしていた。青年は蚊に刺されたところをボリボリ掻きながら、「やっぱり夏はこれがなくっちゃな」と思った。そして、「来年の夏、俺はまた蚊をレンタルできるだろうか」と考えた。青年には、長い間、仕事がなかった。数年後、この青年は、テロリストになっていた。彼はアジトで、大量の蚊取り線香を、密造していた。
SF
公開:25/12/29 06:56

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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