縁筆

2
3

年末。懸賞用ハガキの積まれた部屋に、予約していない重箱が届いた。中に入っていたのは一本の鉛筆。案内の紙には「幸運を呼び込む鉛筆」とだけ書いてあった。試しに、真っ新なハガキに自分の名前と住所を書いてみた。すると、書いて間もなくカニが届いた。数か月前に応募した懸賞が当たっていて、忘れた頃に届いたのだ。幸運を実感した私は、どんどんハガキに住所と名前を書いた。その度にインターホンが幸運を告げるように鳴った。最新家電や、高級食材に旅行券。半日もしないうちに、殺風景だった私の部屋はモノで溢れかえった。一息ついた私は、届いたマシンで淹れたコーヒーを飲みながら、鉛筆の案内を手に取った。にわかに信じがたい現象が起こっている。何気なく紙を裏返すと、裏にも何やら書いてある。「賞味期限は一月三日。使い切らなければ幸運以上の不幸が訪れます」

眠気も吹き飛んだ私はそれから三日三晩、他人の名前と住所を書き続けた。
公開:25/12/28 18:00

黙る子

最近ショートショートを始めた修行中のド素人です。
基本的にnoteにて投稿しております。
一部フォーマットのあったものをこちらでも投稿させて頂きたいです。

note→https://note.com/great_heron1630

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容