美味しさ競争

深夜の台所で、寿司と中華そばとスパゲッティーが言い争っている。一番の人気者は俺だと寿司が胸を張る。
中華そばは湯気を揺らし温もりで勝つアルと啜り音を立て、スパゲッティーはフォークをくるくる回しアルデンテの誇りだと威張る。
議論はより激しくなり、台所が震えた。そのとき炊飯器が静かに言う。人気は一つじゃないよ。
人の気分と季節で変わるから。今は三つの香りが混ざり合って、誰かの笑顔を呼ぶよ。

三者は顔を見合わせ、照れて笑った。今日は引き分けだな。夜が明け台所は静かに戻り、主人が起きてきた。
どれを食べようかな、みんな美味しそうだ。香りは窓の外へ漂い、月までお腹を鳴らせた。
三人は自分の生まれた海や畑や街を思い出し、語り始めた。台所の影が拍手した。
朝の食事の後、彼らは静かに眠り直す。皿のきらめきは約束だった。次に選ばれる時は、互いを讃え合おうと。
台所には小さな余韻が残り、心温まる早朝だった。