白い地図

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とんでもない失敗をしてしまった。地図が雨でにじみ、真っ白になってしまった。配達する家はうろ覚えだ。こんなことではどの家に行けばいいのかわからない。
「だからおれに電子ナビを搭載させればよかったのに」と愚痴るのはトナカイのワイス。「地図を見るなんて時代遅れだよ」
クリスマスの夜は晴れる確率が高い。その確率に甘えていたのが敗因だった。
「センターに戻っている時間はないし⋯⋯今年はもう無理だな」
「こどもたちが待っているのに?」
「そうは言っても、家を間違えるわけにはいかないだろう?」
ワイスはにやりと笑ってこたえた。
「白紙には自由に地図が描ける⋯⋯そうは思わないか? 相棒」
私が意味をたずねる前に、彼はすばやく地図にポイントを落とし込んだ。
「これはいったい⋯⋯!?」
「実はいつも配達先を丸暗記しているんだよ。簡単でわかりやすいだろ?」
こぼれた涙は雨のせいにし、次の家に向かった。
ファンタジー
公開:25/12/25 09:41

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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