挨拶の魔法

ーーこれは、どこかの誰かの日記。
　挨拶をしたあとって、なんとも言えない満足感がある。
　何か目に見えないエネルギーが自分の中に溜まっていく感じがする。
　もしかしたら、これは……そんな気がしてやまない。

　ある日、庭の魔女ーーロサ・リアンナは世界に魔法をかけた。
『挨拶に魔力が宿る魔法』
　世界は挨拶に溢れ、魔力が空気のように揺蕩い始めた。
　いつしか科学と魔法が混ざり合い、世界は新たな進化を遂げていった。
　しかし、それに反して魔女は「はて？」と首を傾げた。
　手元にある『魔力の増減グラフ』に違和感を覚えていた。どう考えても成長が早すぎる。
「……はは〜ん。どうやら私は勘違いしてたようね」
　次に見ていたのは『挨拶の増減グラフ』だった。
「これは想定外だったわ。挨拶には『元来魔力が宿っていた』ってわけね」
　魔女はそっと魔法を解いた。
　今日も世界は、笑顔の魔法に満ち溢れている。