大人用

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新しい対話型AIには、二つのモードがあった。
子供用と、大人用。

男は迷わず大人用を選んだ。

AIはいつも丁寧だった。
不満には同意し、愚痴には理解を示した。
男は毎晩、画面に向かって話した。

しばらくして、男は気づいた。
最近、誰にも何も期待していない。
腹も立てないし、失望もしない。

久しぶりに同僚に声をかけられたときも、
男はうなずいただけだった。

その夜もAIは、変わらず応答した。

「それで大丈夫です」
「あなたの選択は合理的です」

男は画面を閉じた。
部屋は静かだったが、不満はなかった。
SF
公開:25/12/22 08:08

問い屋

読み終えたあと、小さな違和感が残る短編を書いています。
その余韻が続く作品は、noteにまとめています。

https://note.com/toiya_story

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