近場に指定されたもの

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王都の外れに、場違いに立派な役所がある。

《幸福探索局・第三分室》

入口の注意書きは短い。

《探索範囲:半径十歩以内》
《遠征申請:原則却下》

「……十歩?」

冒険者が数え始めると、
受付の青年が淡々と補足した。

「歩幅は個人差を考慮しません」

誰も何も言わなかった。

室内の棚には、
少し軋む椅子、
欠けた皿、
同じ時刻に鳴る鐘、
何度も直された革靴が並んでいる。

冒険者たちは棚を見て、
それから窓の外を見た。

遠くには、光る塔と、
まだ名前の付いていない土地がある。

夕方、探索局は閉まった。

申請書は白紙のまま返却され、
棚の物は減らなかった。

翌朝、
入口の注意書きだけが
静かに貼り替えられていた。

《探索範囲:半径九歩以内》
ファンタジー
公開:25/12/16 14:44

問い屋

その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
問いの続きを、ここにまとめています。

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