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その昔、月は地球の独占地域だった。
しかし、地球と他の惑星間での条約により、月は地球だけのモノではなくなった。
そんな時代に、ラーム氏は月の石を売って生活していた。
彼は他惑星が占有している月の土地に旅行者として渡航し、その土地の石を手に入れて売る。
彼の仕事は、条約がただの石には適用されないという、条約の抜け穴をついたものだった。
ラーム氏の月の石は、地球で飛ぶように売れた。
ある者はそれをネックレスやプレゼントに。またある者はそれを眺めながら、人類が初めて月に降り立った時代に思いを馳せているようだった。
だが、そんな日々はあっけなく終わりを告げた。
条約が変わり、月が再び地球の独占地域になったのだ。
ラーム氏の月の石は売れなくなった。

彼は満月の夜、売れ残った月の石を握りしめながら思った。
「手の届かないモノは月でも、手の中のモノは石ころなんだな。」
SF
公開:25/12/15 22:34
更新:25/12/15 23:46

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
学生時代からのショートショート好きが高じて、2025年4月から自分でも書き始めました。
幅広く色々なジャンルの作品を書いていきたいと思っております。
よろしくお願いします。
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