河童の皿

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我が家には代々伝わる皿がある。毎年正月になるとそこに刺し身を並べ、近所の川に架けられた橋へ大人たちだけで赴くのだ。
子供の頃の私には明かされなかったけれど、二十歳と相成り、ついに情報が解禁された。
「川を守っている河童と酒盛りするんだよ」そう語る父の真剣な眼差しには微塵の冗談も交錯していない。「今年はおまえも同行するんだぞ」

そして幸先のよさそうな正月晴れの日、父、母、私の三人で橋に向かった。そこには、むかし妖怪図鑑で見たままの河童が待っていた。
「静かでいい日だねぇ、佳き良き!」
終始ニコニコし、酒が入って饒舌になった河童とみんなで楽しく飲んだ。
「じゃ、この川、守っとくわ!」
「よろしく頼みます!」
がっちり握手を交わした時、河童の頭に皿がないことに気付いた。まさかとは思うが先祖が皿を質に取り、治水をするよう脅した――!?
帰宅後、父に聞いたが、謎の笑みを浮かべただけだった。
ファンタジー
公開:25/12/15 08:56

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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