サンタクロースご用達床屋

民家の一角にある、個人経営の床屋で私は理容師をしている。
地域密着型、と言えば聞こえはいいがお客さんの殆どが近所の方。のんびりやるには丁度いい。
だが、クリスマスを控えたこの時期はかなり忙しくなる。
というのも長年、近所に住むサンタさんの散髪を担当していたところ、そのサンタさんから口コミが広がり、クリスマスを前に髪と髭を整えて欲しいとサンタが殺到する。
頭髪だけでなく、あの長い髭のカットからシャンプーまでするんだ。そりゃサンタからすれば至れり尽くせりだろう。
そんなサンタからの口コミで、この前は禿頭の仙人が「髭を整えてほしい」とやってきた。
髭の散髪をメインに来たのは仙人が初めてだ。
仙人はお代として桃を置いていった。世捨て人故、お金を持っていないのは仕方がない。
貰った桃を早速食べる。するとすぐに長年私を苦しめていた病気が治った。
さすが仙人の桃…お金では買えない”健康”をいただいた。