ずっと一番がいい

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3人きょうだいの末っ子で、兄2人との闘いを勝ち抜けてきたわたしにはある特技が身についた。それはすばやい状況判断と、相手の喜ぶ言葉を発することである。特に雲行きがあやしくなった時のわたしの右に出る者はいない。そう思っていたけど、いま人生最大のピンチに陥っている。
彼――巨大な黒い岩のような見た目をした悪魔は、友人の亜子かわたしのどちらかに魂を差し出すよう脅してきたのだ。もちろん2人で助かりたいけど名案が浮かばない。
「⋯⋯生き延びるのは1人。さぁどうする?」
地の底から這い上がってきたかのような恐ろしい声。
亜子は震える声でわたしにささやく。
「ねぇ、こういう時の詭弁だよね? なんかないの?」
「ごめん無理⋯⋯」
「このあいだ、『ずっと一番がいい』って言ってたじゃん。あたしに生存権譲ってよ」
わたしの敵は悪魔以前に亜子なのだと思った。
刹那、降臨してきたごまかし言葉で窮地を脱した。
ファンタジー
公開:25/12/13 08:32

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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