ある寒い日のこと

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 牡丹雪が降っている。轍に降り積もった雪が車の重さによって押し固められる。その車には1人の亡骸が積まれていた。
 人々の顔は暗く沈んでいる。そして何人かは泣いているかもしれなかった。黒服に身を包んだ人々が一つの空間を圧迫する光景は何か大きな動物のように見えたが、肝心なその何かはついに思いつかなかった。
 前で老人が何かを喋っている。照明の加減なのか老人の顔は靄がかかってよく見えない。しかし、その声はどこか懐かしさを感じさせた。
 長い話の後、1人ずつに焼香の時間が設けられた。様々な年齢の人間が粉末を摘んでは捨ててゆく。窓の外ではさっきまで降っていた雪が止み、重く黒い空だけが残った。
 焼香台の前に立つ。
 
 そういえば……誰の……だろう。

 焼香を終え顔を上げた時、私は遺影の中の自分と目が合った。
 その瞬間、私の視界の全てがあの靄によって包まれた。
 それはとても寒い日のことだった。
その他
公開:25/12/12 21:33
更新:25/12/12 21:39

おいしい舞茸( きょーと )

舞茸です。
舞茸そのものです。

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