金か心か

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竹田浩一は思う。
『俺は何の為に、弁護士になったんだ。』

「先生、相談に乗って頂けませんか?」弟が結婚詐欺に遭ったのではないか。と相談された。

浩一は思う。
『書いた弟の落ち度だよ。』

弁護をしても、金にはならない案件。
適当にあしらって、追い払いたかった。
弟が被害にあっていると、主張を続ける依頼者の真剣さに心が動かされた。

『俺は何の為に、弁護士になったのだろう。』
浩一は言った。
「答弁書を自分で書いて、相手と戦う方法もありますよ。」

詐欺被害に遭ったと訴える依頼者が弟を連れて、事務所に来た。
「初めまして。戦い方を指南していただけるそうで。宜しくお願い致します。」

浩一は思う。
『素直で真面目な青年だな。こういう人を俺は助けたかったんだよな。』

人柄は人を救う。救われた者は他の誰かを救う。
優しい心は世界を救う。金も大事だが、金に支配される生き方はしたくないものだ。
その他
公開:25/12/12 13:13

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