さよならは言わないで

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「寒いね」
「当たり前だ。冬なんだから」
幼なじみは冬休みのあいだに引越しすることが決まった。こうして2人で歩くのもあと少しだけだ。
駅まで徒歩15分。わたしたちは寒さを忘れるべく、さっさと歩を進める。
子供の頃は意識せず一緒に遊び回っていたけど、周囲からからかわれるようになって、別行動を取るようになった。奇跡的に同じになった高校には、1時間に3本しかない私鉄を使って通学している。だから必然的に家の前で遭遇するのだ。
暖かい電車に乗り込むと、わたしはバッグから餞別を取り出した。
「はい、これ」
「のど飴?」
「御名答」
「見たまんまじゃん」
幼なじみはけらけら笑って無包装ののど飴をリュックにしまう。
「お返しにこれやる」
「カイロ? 自分で使えば?」
「まぁそう言わずに」
無理やり押し付けられたそれを、わたしは仕方なくポケットに入れる。裏面に書かれたメッセージには気づかないフリをして。
青春
公開:25/12/12 10:16

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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