精一杯のしあわせ

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悲しくなくても
おふとんのなかでまるまってるだけで
容易に悲しくなれる

あのときの引っ越し屋は私をバカにして
あのときの警官は私をバカにして
あのときの不動産屋は契約の説明を面倒くさそうに不貞腐れながらして
市バスが轢くのを意図してスピードをあげてきた
なんてこともあったっけ

過去のあれこれ、それは往々にして嫌な思い出たちだけど
悲しさはそれらを、私に断りもなくやたらとヒキダシから出してくる

あったかい炊きたてのごはんに海苔の佃煮をのせて
ちょっぴり乱暴に口に放り込んでさ

焼き魚のアブラでみだされた口のなかは
ほうれん草のおひたしと黄色いたくわんで
もとに戻してあげてね

にんじん、だいこん、白菜、里芋に
豆腐の入った具だくさんのおみそ汁でひと息ついたら
もう一度、白いごはんにとりかかるんだあ

私にできる精一杯のしあわせを思いうかべ
過去のあれこれを退治してみる







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その他
公開:25/12/14 04:08

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