カリスマイエティのリエティ

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ヒマラヤ最強の雪男、リエティは今日も山頂で毛並みをなびかせていた。その姿は神のように荘厳で、吹雪さえも彼の周りでは静まる。

そのリエティの耳に、かすかな声が聞こえた。

「た、助けて……」

人間が遭難している!

大事件もリエティにとっては朝飯前のストレッチ。
音もなく雪面を滑走し、翼のあるが如く秒速100メートルで救助へ向かう。片手で制せば雪崩さえ止まるカリスマ性。

遭難者を見つけて背負うと救助隊の元へ一走り。一同の手前ギリギリで音もなくピタリと停止。雪煙は一切立たない。

「伝説のイエティ!?」「写真を撮れ!」
人間たちに騒がれても動じない。カメラ目線で前髪を整える仕草をすると同時に吹雪が吹き荒れ、シャッターが切られる前に彼はいない。後に残ったのは遭難者と、雪で描かれたサムズアップ。

寒さで震えていた人間たちが、今は全員、別の理由で震えていた。ーーイエティ、カッコよすぎる……。
ファンタジー
公開:25/12/13 19:46

藍見サトナリ

ご覧くださってありがとうございます。
学生時代、文芸部に所属して短いお話を書いていました。あれからウン十年、仕事、家事育児に追われて自由な創作から離れていましたが、心のリハビリ(ストレッチ?)のために登録。
//日々の生活が追ってくるため、ログインが不定期になります。

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