冷たい手

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 冬の夜、自販機で缶コーヒーを買おうとした時、自販機の傍らの缶用ゴミ箱にふと目が行った。ゴミ箱の穴の中から、人間の手が出ている。誰かが捨てたらしい。俺はその手を握った。冷たい、小さな手だった。俺は不憫に思い、温かい缶コーヒーを買い、その手に握らせようとした。しかし、手は缶コーヒーを握らず、缶コーヒーは地面に落ちて、鋭い音を立てた。俺は缶コーヒーを飲み干し、それをゴミ箱の穴に押し込んだ。手が中に落ちて見えなくなった。俺は自分の手をさすりながら家に帰った。俺の手も冷たかった。
ホラー
公開:25/12/08 06:54

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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