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「社長のお部屋にご案内いたします」
そう言ってメイドがK助を自宅へ迎え入れた。

部屋へ向かう道中、K助がこぼした独り言に対し、反応したメイドと雑談を交わした。
「すごい大きなご自宅だ…」
「初めて足を運ばれた方々は、皆そう言います」
「高価な品が無防備に置かれていたら、盗まれてしまうのでは?」
「奪われてもすぐに戻ってきますので」
K助は、その発言に疑問を抱いた。

社長室へ通された商社マンのK助は、資産運用の状況説明を終え、社長と雑談をしていた。
「現物資産もお持ちなのですね」
「すべて無価値だよ」
「そうは思えないですね」
「K助くん、君には価値がわからないみたいだね」
そう言って近くに置いてある壺の側面をK助に見せた。

そこには、社長の名前が深く彫り込まれていた。
「大人になるにつれて物に名前を記載しなくなる」
「盗難を未然に防ぐ方法としてこれ以上に簡単なことはない」
SF
公開:25/12/11 19:42

アメ玉

アメ玉です。
「サッと読めておもしろい物語」を書くことが目標です!

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