配達請負

フリマで落札したPC部品は発送しましたと表示されたまま６日間着かない。売主に聞こうか…いや、もう少し待ってみるかと迷いつつ７日目に突然、玄関先で ワン！ と短く鈍い声が響く。
泥の香りを伴う声はドアー外からの風の様だ。そこには背に大きな包みを背負い込んだ汚れた一匹の犬がいた。
まるで野山を超え、川を必死に泳いで来た旅人の様だ。
君が、届けてくれたのか、答える様に犬は尻尾をひと振りした。
その一振りが、長い道のりの苦労を多く語っていた。
包みを見ると、注文の商品だ。包は水に濡れ角は丸くなり、正に旅の記録の様に疲れている。
思わず犬を家に招き入れ、ご馳走を差し出した。
犬はその器を見た瞬間、旅を終えて力が抜けた様に尻尾をふりふり、目を細めた。
その尻尾の動きは今までの苦労を語っていた。使命、完了しました。
そしてふと気づいた。
宅配会社のステータスはまだ配送中のままで、急ぎ受取更新しなければ。