年賀状

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今年は年賀状を辞めるかどうか、決めかねているうちに瞼が重くなり、私は椅子にもたれたまま眠りに落ちた。
気づくと、真っ白な雪原のただ中に朱色の鳥居がぽつんと立っていて、そこをくぐると、
青磁色に輝く一頭の馬が待っていた。
たてがみは金の糸のように煌らめき、吐く息は光の粒になって散っている。

今年はどうするの、決心が付いたのかい。
馬は古い友のように私に語りかけてきた。夢の中ではそれは自然で、私は迷っているよと答えた。
馬は雪原よりも深い静けさを宿した瞳で、私をジート見つめる。

賀状は雪の結晶に似ているよ。形が違い、届いた心にだけにそっと融ける。
その言葉に、私はこれまでに友より受け取った賀状の懐かしい筆跡や言葉を思い出した。
人は歳を重ねると、心の引き出しを一つずつ増やしたくなるものさ。
そう言うと馬は、雪に足跡を幾つも残して、ゆっくりと歩きだした。
そして私はその背中を追った。
ファンタジー
公開:25/12/05 22:45

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