げんき君

私が通っていた小学校には、げんき君と呼ばれる、笑顔の子どもの、落書きがあった。
げんき君の周りにはげんき君同様、笑顔の子どもの、落書きで溢れていた。これは皆、この学校で行方不明になった子ども達だ。
何で分かるのかって？調べたからさ。
あと、げんき君の前で笑いながら私をいじめたあいつが、壁の中へと引きずり込まれるのを見たから。
行方不明になったあいつ。何も知らないと白を切り通した私。もうずいぶん昔の話だ。
大人になり、教職に就いた私は久しぶりにその事を思い出した。
母校には今もげんき君の落書きが残っていた。いじめっ子の姿も残っている。
それを見て思わず、ざまあみろ！と笑ってしまった。
壁からげんき君の手が伸び、私の腕を掴む。
げんき君だけでなく、子ども達も私に助けを求めるかのごとく手を伸ばす。
私も助けを求めるが誰にも届かず、行方不明になった。
校舎の落書きに、笑顔の先生の、落書きが増えた。