夏の魔物

夏が来た。
今年の夏、私はやっと大人になれた。
燦々と降り注ぐ日光。風に揺れる木々たち。
夏の風景は、大人へと羽ばたく私の事を歓迎しているかのようであった。

だが、そんな夏にも怖い存在がいる。
夏には魔物がいるのだ。
それも、巨大な魔物だ。
魔物は、私に大人になった嬉しさを感じさせる暇も与えず、その巨体と手に持った捕獲装置で私に襲いかかってきた。
私は必死で逃げた。
しかし、捕まってしまった。

私は、魔物が持つ牢屋へと幽閉された。
暗い檻に閉じ込められ、揺さぶられながら、私はどこかへと運ばれた。

「処刑される。」

そう思った。

夕暮れ時、魔物が私に近づいてきた。
そして、私は解放された。

何も理解できないまま羽を広げ飛び立つ私に、魔物は手を振りながら言った。

「セミさん、バイバイー！」