派遣の卵

職場に新しい派遣さんが来ることになった。ミーティングが終了すると、さっそく人事担当者がたずねてきた。
「今日からこちらでお世話になるかたをお連れしました。みなさん、よろしくお願いいたします」
総勢十名の部署だが、いっせいに驚きの声をあげた。人事担当者が紹介したのは、小さなカゴに入った金色の卵だったからだ。
全員の心の声を代弁するかのように課長が口をひらいた。
「すみません、失礼でしたら大変恐縮ですが⋯⋯卵⋯⋯ですよね？」
「えぇ、卵⋯⋯さんです」人事担当者は歯切れ悪く続けた。「社長のご推薦です」
世話するようにということだが、一点、問題があった。私たちは非常に仲がよろしくないのである。
押し付け合いの末、当番制で面倒を見ることになったが、引き継ぎをしているうちに信じられないほど連帯感が強くなった。
ちなみに数ヶ月経っても卵からなにかが産まれる気配はない。