木枯らし

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 寒空の下。待ち合わせ場所までの並木道。木々は秋の盛りは過ぎたが色とりどりに色付き、落ちた葉は美しい絨毯を織っている。一歩踏み込めば乾いた葉が割れる音と柔らかな踏み心地。風が吹けば葉が鳴り紅葉吹雪。まるで壇上でカーテンコールを浴びるようで心が踊る。

浮かれながら歩いていると強い北風が吹いた。思わず首をすくめる。それはまるで蝋燭の火を吹き消す様に木の葉の色を殆どかっさらってしまった。幕引きの様だ。一瞬で冬が来た。
少し寂しい心持ちになってしまった。空の劇場はしんと鎮まり足跡がよく響く。

しかし、先に目をやるとモノトーンの世界に赤いマフラーが見えた。あぁそうか、ここからは彼女の舞台だ。彼女がこちらに気が付き微笑む。赤く高揚した頬は雪ノ下の南天の実を思い起こさせた。
ファンタジー
公開:25/11/30 10:20

あいはみと

最近始めました。
まだ勝手がわからないので探り探り。
短い話の掛け合いで関わり合う物語が出来たら面白いかなと試行錯誤中。

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