右右右

0
2

 地球最後のスイカで、スイカ割りをすることになった。政府はスイカを割る役を国民から募集した。僕は書類を送り、面接を受け、見事合格した。その日から、特訓が始まった。目隠しの着け方、棒を振る訓練、筋トレ、周りの指示に的確に対応するためのレクチャーなど、様々なカリキュラムを受けた。そして、万全の状態で、スイカ割りの日を迎えた。当日、スイカ割りが行われる砂浜には、数え切れない程の見物人と、テレビのカメラクルーがいた。彼らが見守る中、砂浜に最後のスイカが置かれた。僕は目隠しを着け、棒に額を付けてぐるぐる回り、それから棒を構えた。僕は歩き出した。「右、右、右!」背後から声が聞こえた。僕は右に向かって一歩、足を踏み出しかけた。その瞬間、得体のしれない感情が僕の頭を支配した。僕は叫び声とともに、棒を放り投げ、左に向かって、全力疾走していた。
SF
公開:25/11/30 07:58

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容