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 とある国の仕立て屋が、自国の暗君を懲らしめるために一つ嘘をついてみた。

「どうでしょうこの立派なお召し物!」

 そう言って仕立て屋は跪き、手には何も持っていないのにも関わらず、王に調度品を見せるような仕草をした。

「いかがです王様。こんな手の込んだお召し物、滅多にお目にかかれませんよ」

 さらに仕立て屋は、いかにも着物の背や袖に施された豪華な刺繍を見せつけるような仕草をし、最後に「しかしですねぇ」と付け加え、にやりと笑った。

「この着物なのですが、愚か者には決して見ることのできない不思議な着物なのですよ。ま、才色兼備、聡明叡智、全知全能、焼肉定食の王様には関係ない話ですな! さ、いかがです?」

 その言葉に、王は仕立て屋の懐を見つめ、しばらく首を傾げたり唸ったりしていたが、やがて口を開いた。

「いーや全く見えん! よし、その服を我が国の若い女という女に着させよう!」
その他
公開:25/11/29 17:05

ウルス・ミシカ

小説を書くクマです。
 

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