責任サーバー.exe

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西暦2145年、課長は責任サーバーを操作していた。
「削除」を押すたび、部下の名前が静かに消えた。
責任はクラウドへ送られ、記録だけが薄く残る。

課長は満足していた。
「責任は管理すれば、持たなくていい」

その時、画面に警告が出た。
――未読ファイル検出。
「課長の責任.exe」が自動で複製を始める。

削除を試すが、数は倍々に増えていく。
ログには短い文字列が積み上がった。
「譲渡:A」「譲渡:B」「譲渡:C」

やがて画面いっぱいに課長の顔が並んだ。
どれも微妙に表情が違う。
笑うもの、黙るもの、こちらを睨むもの。

ひとつずつ音もなく消えていき、
最後に残った一つだけが言った。
「管理できる責任も、できない責任もあります」

そして、その顔も消えた。
SF
公開:25/11/29 22:04
更新:25/11/29 23:24

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。

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