公園のブランコ

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 久しぶりに帰った故郷の町。生まれ育った実家の建物は跡形もないが、昔よく遊んだ小さな公園が残っていた。小学生の頃、ブランコで靴飛ばしをして、友達と競争したものだ。
 やってみようか。童心に帰るって年でもないけれど。
「えいやっ」という掛け声とともに靴が宙を舞う。
 意外と飛んだ。まだまだ俺も老け込む年ではないかな。

 そう思ったら、隣のブランコから飛ばされた靴が、俺の靴の向こう側に落ちた。
 横を眺めるとあいつの顔。いたずらっ子の面影は昔と変わらない。こんちくしょうと思い、靴を飛ばす。またあいつも。
 この遊び、熱くなると時間を忘れるんだ。
 最後の一回で逆転負け。いつもそうだった。
 
 いつの間にか夕暮れ。風が冷たい。そろそろ行くとするか。
 芝生の上に置いていた黒い上着を着て歩き出す。
 俺ひとり。
 空を見上げてつぶやく。来年、また勝負しよう。

 さよなら。
ファンタジー
公開:25/11/27 18:04

ナラネコ

老後の楽しみに、短いものを時々書いています。

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