祝福の魔法陣──残影の記録

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祭壇は磨かれ、供物は整い、
精霊の灯が静かに揺れていた。

だが、大いなる来訪者は現れず、
ただ、扉の前で一度だけ風が止んだ。

評議の者たちは短く視線を交わし、
その沈黙がすべてを語った。

「……記録だけは残そう」

精霊の光は細い刻印となり、
彼らは祭壇の前で静かに並んだ。

祝福の陣は荘厳のまま、
踏まれぬ円環だけが、かすかに光を宿していた。

──迎え損ねた影ほど、祝福に似るものはない。
その気配だけが、余白に残された。
ファンタジー
公開:25/12/17 18:02
更新:25/12/17 18:45

問い屋

読み終えたあと、小さな違和感が残る短編を書いています。
その余韻が続く作品は、noteにまとめています。

https://note.com/toiya_story

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