ゴールしたくない迷路

　小学校の秋祭りには特別な思い出がある。

　それは理科室の段ボール迷路。この製作が許可されているのは高学年だけだった。

　低中学年はゴールしたのち極めて理不尽な仕打ちを受ける。
　迷路を純粋に楽しめるのは１年生だけだろう。その１年生もゴールした直後に天上から下界に突き落とされるのだからたまらない。

　２、３、４年生は学年が上がるにつれ、強制参加の迷路に対する呪言の闇を強くしていく。

　現今の教育現場ではおよそ考えられない！

　ゴールすると床のゴミをべったり付着させたこんにゃくを顔面に押し付けられる。
　理科室内は薄暗くて誰にされたのかわからない。

　もとより、そういう伝統だと思い込んでいるから、ただ黙して不快な感触に耐えるのみ。

　私は５年生の夏に転校したので下級生に不憫な思いはさせていない。
　あれから幾星霜、たまに思い出しては首をかしげている。