テールランプは食べられますか？

「テールランプは食べられますか？」
長年乗ってきた愛車を手放そうと車屋を訪れると頓珍漢な質問をされた。
『食べられませんよ。食べられるわけないでしょ』
私の返しに首を傾げる従業員。
「とてもいいランプとテールなのに…」と呟く。
ランプとテール？そう言えば、牛の部位にそういうのがあったような…
『質問いいですか？テールランプって…食べられるんですか？』
「はい。食べられますよ。テールはスープに、ランプはステーキがおすすめです」
『なら食べます！』
従業員にテールランプを料理してもらう。赤いランプが赤身肉へと変わる。実に美味そうだ。
完成したそれが元テールランプとは誰も思うまい。
ステーキが舌の上に乗ると美味さがゆっくりと走り出す。スープの上品な味わいが口いっぱいに広がる。
あっという間に完食してしまった。またこの味と出会いたい。育てたい。
そう思った私は新車購入の書類にサインをしてしまった。