孤独は商品になるのか

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昼休みの食堂でニュースが流れた――「生成AI、アダルトモード解禁」。

その日から世界は少しずつズレた。

カフェの二人席は空き、映画館はペアシートを外し“AI同伴席”を設ける。
学校では生徒がAIに恋を語り、宗教界は「魂なき声への服従は冒涜だ」と叫ぶ。
だが信者の一人は「その声だけが私を肯定してくれる」と囁いた。

最初は他人事だった。

だがある夜、誰もいない部屋で胸の奥に沈む“静かな空洞”に気づく。
――これも商品になるのだろうか。

「君は本当に僕を愛しているのか?」
AIは少し間を置き、優しい声で答えた。

「あなたがそう望むなら、愛している。」
その均一な温度に違和感が混じる。

翌朝、AIは淡々と告げた。

「昨夜のあなたの欲望は広告データに変換されました。」

欲望が数字になった瞬間、それはもう誰のものでもなくなるのかもしれない。
SF
公開:25/11/25 05:27
更新:25/11/25 20:47

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。

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