黒歴史色の絵の具

ある国の王様の肖像画を見た私は、思わず大笑いした。
それを無礼と思う者は誰もいない。むしろ「思わず笑っちまうだろ？」と気さくに声をかけてきた。
ああ、なんて魅力的な絵なんだ。こんなにみっともない絵は初めて見た。
肖像画の王様はいかにも”カッコつけてます！”や”モテたいです！”といった雰囲気が出まくっている。なのに馬鹿にしている感じは一切ない。
聞けばこの肖像画の黒絵具には、王様の黒歴史を溶かしたものを使っているそうだ。
誰もが隠したがるそれを使う事で、それを見た国民は天上人そのものだった王様も人並みに悩むのだと理解したそうだ。心無い王族と呼ばれる事がなくなったそうだ。
また、王様の青春を溶かしたものを使った絵もあった。
黒歴史と相まって灰色なその絵を見て、国民は王様を遊びに誘い始めたという。青春を取り戻し始めたという。
今も「これから飲みに行くんだが一緒にどうだ？」と気さく私を誘ってきた。