空き箱

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母が死んだ。
突然だったので、バタバタだった。
財布、銀行通帳、印鑑、保険の証書など家中を探し回った。
それらはバラバラの場所に統一感無く置いてあり、しっちゃかめっちゃか様々な場所から出て来た。
探しながらうんざりしつつ、これが母の頭の中だったんだな、とも思った。

物置代わりに使っていた部屋の床の隅に、お菓子の缶が置いてあった。
開けてみると、よくわからない布やふ紙と一緒に、銀色の小さな指輪がポイっと置いてあった。
缶の箱が大きかったので、その指輪は場違いで不釣り合いな感じがした。
拾ってよく見ると裏にアルファベットが彫ってあり、どうやら結婚指輪のようだった。
母は無意識に、大事なものを寝室の鏡台にしまっていることを知っていた。
だからこれは彼女にとって、本当に要らないものだったんだな、とわかった。
その他
公開:25/11/26 17:55
空き箱

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