つくりもの市

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商店街で『つくりもの市』が開催されているらしい。物好きな私は冬の始まりの風がびゅうびゅう吹きすさぶなか徒歩で向かい、のぼりを出していた一軒の店に飛び込んだ。するとさっそく角刈りの店主が売り込んできた。
「いらっしゃいませ! 今日のイチオシはこちらの目玉ですよ!」
紫色の敷布の上には、本物と見まがうほどリアルな目玉が1セット置かれていた。しかもさっきまであさっての方向を見ていたくせに、今は真正面からわたしを見据えている。
「なかなか愛嬌があるでしょう。どうです、お家に1セット」
そう言われても、気味が悪いし使い道が思い浮かばないし、10万円という価格にも辟易していた。わたしは「いろいろ見て回って、欲しかったら戻ってきます」とあいまいにごまかし、家に帰った。
よくよく考えてみたら、シャッター街と化した無人の商店街に人がいるはずがないのだ。私は慌ててストーブを焚き、エアコンもつけた。
ホラー
公開:25/11/26 12:38

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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