靴ひも

「僕は貴方の靴ひもになるから、貴方も僕の靴ひもになって下さい！」
夫からのプロポーズは靴好きの私にとても響いた。
靴は二つで一足。夫という靴に、私という靴ひも。私という靴に、夫という靴ひも。
私達はお互い、相手にとってなくてはならない関係でいようと誓い合った。
そのはずなのに…夫は私を置いて旅立ってしまった…
そんな…私はどうしたらいいの？靴は片方だけじゃ歩けないのよ。
空を見上げ、涙を流す私。
「ちょっとママ、大袈裟。パパは１週間出張に行っただけでしょ。すぐに戻ってくるよ」と娘。
でもでも、向こうで若くて綺麗でカッコいい靴に出会ったりしたら…１週間後、帰ってきた夫が靴ひもなしの靴になっていたらどうしよう…
「考えすぎだって。その何でもマイナスに考えるのと、何でも靴に例えるのやめてよね。それ、聞いてる側は結構、苦痛なんだから」
ダジャレ？と聞くと娘の堪忍袋の靴ひもがぶちッと切れた音がした。