とうもろこ歯

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前歯が抜けた。抜けた歯は床下に投げろとじいじが言うから、適当に庭に投げておいた。
初めはうれしかったけど、やっぱり歯抜けは嫌だ。口がスースーするし、ごはんは噛みにくいし、笑うとびっくりされる。じいじの気持ちがやっと分かった。
ある日ふと庭を見ると、僕が歯を投げた辺りに、見たこともない草が生えていた。
世話もしていないのに、それはぐんぐん大きくなった。
そしてある日てっぺんに白い花を咲かせ、やがてとうもろこしにそっくりの実をつけた。でも、それは真っ白で、茹でても食べられないほど硬かった。
じいじと僕はその実を一つずつちぎり、抜けた歯の所に刺してみた。すると、フィットするではないか。試しにせんべいを食べてもびくともしない。僕らはうれしくて、とうもろこ歯と名付けた。
そんなある日、近所の歯医者の裏を通ったら、庭にとうもろこ歯がたくさん生えているのが見えた。その歯医者、人気らしいけどもしかして…
ファンタジー
公開:25/11/22 15:48

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』(つむぎ書房)
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテスト特別賞「かぞくしんぶん」
2024  第20回坊っちゃん文学賞佳作「鯉のぼり」

発表し合える場、とてもありがたいです!

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