沈黙の鏡

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試練の間に立つと、炎の精霊と風の精霊が面接官のように沈黙を差し出した。
十秒。呼吸は浅く、鼓動は石を打つように響く。

炎の精霊が裂くように告げる。
「お前の言葉、揺れている」
言い訳を並べた声は霧となり消え、ただ頷いた者だけが扉の光を受ける。

風の精霊は影のように問いを投げる。
冷静に受け止めた瞳には静かな炎が宿り、感情に呑まれた影はさらに沈む。

試練は短い。だが、その反応が未来を決める。
精霊たちは再び、間を置いて告げた。

「……お前の考え、違う気がする」

挑戦者の胸中に、一瞬、誰かの声がよぎる。
沈黙が張り詰める中、挑戦者は一歩踏み出し、逆に問い返す。
「では、あなた方の考えは、どこで揺れているのですか?」

その瞬間、試す側と試される側が反転した。
沈黙の鏡に映る本性は、精霊たち自身だった。
ファンタジー
公開:25/11/22 17:26
更新:25/11/25 04:41

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、  

読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。

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