波音
4
3
波の音が消えた。老人はベッドから起き上がり、外に出た。そして、住処である小屋の近くにある、かつて海だった場所に降りた。そこにはラジカセが一台、置かれていた。老人はラジカセからカセットテープを取り出した。カセットテープには『波音』と書かれたラベルが貼られていた。老人はテープを裏返し、ラジカセにセットした。そして再生ボタンを押した。ラジカセから波の音が流れ始めた。老人は小屋へ帰った。この星に生きている生物は、老人だけだった。老人は最近、自分が死んだ後のことを考えるようになった。「俺が死んだら、この星は本当に静かになるだろう」そのことは老人の心を、安らかにした。
SF
公開:25/11/22 06:32
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
ログインするとコメントを投稿できます
六井象