満たされぬ果実

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森の奥で、旅人は光を放つ果実を見つけた。
ひと口かじれば甘露のような幸福が胸に広がり、
二口目で笑みがこぼれる。

だが三口目からは、輝きが濁り、
身体は鉛のように重く沈んだ。

なおも息づく欠片──
食べれば永遠の満足、しかし動けぬまま森に眠るだろう。

旅人は震える指で果実を置いた。
残光が背を淡く照らし、空腹のまま歩き出す。

その背に、森の風が囁く。
「満たされぬことこそ、生の魔法なのだ──」
ファンタジー
公開:25/11/22 07:04
更新:25/11/24 08:33

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、  

読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。

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