正直な掃除機

最新型の掃除機を買った。ワケあり商品としてアウトレットショップに出ていたのだ。「ワケ」は「正直すぎるため」。最近の家電はAI搭載で、おしゃべりも達者。基本的にニュートラルな性格に設定されるようだが、まれにエラーでクセの強い性格が出回る。これは返品されてアウトレットへ流れたものらしい。

ワクワクと電源を入れる。とたんに掃除機がしゃべり始めた。
「こんな汚い部屋、見たこと無いです。すごいホコリ。吸うの、嫌です」
なるほど、たしかに正直だ。
「悪いね。でもやってもらわないと。キミの仕事でしょ？」
「仕事でも、嫌なものは、嫌です」
ホントに正直だが、知ってて買ったので文句は言えない。
「まず軽く、自分で掃除してください」
こうして私は掃除機の指示のもと、水を含ませた新聞紙を散らして箒で掃くという、文献でしか見たことのない掃除を行った。そして部屋はすごく、きれいになった。最新型は、知識も豊富だな！