ポケットの中の青い石

0
2

「ほら、受け取って。」彼が差し出した青い石は、暮れかけた空を小さく閉じ込めたみたいに澄んでいた。
「本当に願いが叶うの?」私が尋ねると、彼は肩をすくめた。
「叶うかどうかより、握ってると前に進める気がするだろ?」
風がふっと吹き、石の面がきらりと震える。
「じゃあ…迷わない心をください。」
「それなら、もう持ってるよ。ほら、ポケットの奥を探してごらん。」
指先が布の底に触れた瞬間、石は小さく脈打ち、歩幅に合わせて優しくリズムを刻んだ。
恋愛
公開:25/11/24 10:52
更新:25/11/24 11:13

森康雄( 千葉 )

短い物語の中に、小さな驚きと余韻をそっと閉じ込めています。
読んでくださる方の日常に、ひとしずくの“たのしい違和感”を届けられたら嬉しいです。
よろしくお願いします。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容