柿の保存

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実家から届いた、段ボールいっぱいの柿。
ありがたいはずなのに、台所は熟れすぎの匂いで満ちていく。

皮を剥くたび、時間が削られる。
鍋の中でぐつぐつ煮えるのは、果実だけではない。
親の気持ちと、こちらの労力も一緒に煮詰まっていく。

蜂蜜をひとさじ垂らすと、
親の愛が、自然の甘さのように染み込んでいく。

甘く仕上がったコンポートを口に含むと、
親の温かさが、ほんのり舌に残った。

――「親の愛は、柿のように熟れすぎる前に保存できるのだろうか。」
その他
公開:25/11/24 06:58
更新:25/11/24 07:48

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、  

読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。

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